消化器
消化器はどのような臓器?
消化器は口から肛門まで続く消化管(口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、肝臓・胆のう・膵臓からなる付属器官とで構成されています。
消化管は、胃から小腸の前半部分が摂取した食物を栄養素に分解(消化)する働き、小腸の後半部分から大腸が栄養素や水分を血液の中に吸収する働きをしています。最後に消化されにくい残りの部分と老廃物を体から排泄する役割ももっています。
肝臓は胃の右側にある臓器で、①吸収した栄養素の代謝や貯蔵、②有害な物質の解毒、③消化液の1つである胆汁の生成、といった働きをしています。胆汁は肝臓で作られた後、胆のうという袋に一時的に蓄えられ、小腸に分泌され脂肪を消化する役割があります。
膵臓は胃の裏側にある臓器で、消化液の1つである膵液や、インスリンなどのホルモンを生成して分泌しています。
全身性エリテマトーデスによる消化器の症状
全身性エリテマトーデス(SLE)では、約半数の患者さんに消化器の症状が起こると言われています。原因として、SLEによる免疫反応によって消化器の臓器そのものや臓器を包んでいる膜(腹膜や腸間膜)に炎症が起こると考えられています。また、薬剤が影響して消化器の症状が出る場合もあります。
症状としては、消化管の粘膜が荒れたり、腫れたりすることで腹痛や下痢が生じたり、栄養素をうまく吸収できなくなることがあります。このような症状を起こす状態を「消化管潰瘍」や「ループス腸炎」、「ループス腹膜炎」、「蛋白漏出性(たんぱくろうしゅつせい)胃腸症」などと呼ぶことがあります。また、膵臓や肝臓に炎症が起こると、腹痛や下痢、だるさ、血液検査で膵臓や肝臓の数値が悪化することがあります。このような状態を「急性膵炎」や「ループス肝炎」、「ルポイド肝炎」などと呼ぶことがあります。
ステロイドやその他のお薬も消化器を通って吸収・代謝されますので、消化器の症状があると薬の効果にも影響することがあります。
消化器の症状に対してどうしたらよいのでしょうか?
患者さんひとりひとりの病気の状態にあわせて治療を行います。消化器の症状が出ると腹痛や下痢のために食事がとりづらくなる場合もありますが、近年の治療の進歩によって多くの患者さんが消化器の症状がなく過ごせるようになってきています。一方で、消化器の臓器は痛みや症状が出づらいこともあるため、何らか消化器の症状がある場合は主治医に相談したり、定期的に血液検査を受けることが大切です。血液検査以外に、画像検査(レントゲンや腹部エコー、CT、MRIなど)や内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)を行うことがあります。
また、下痢がひどいときには、ステロイドや免疫抑制薬が消化管から吸収されず、効果が落ちてしまうことがあります。そのような場合にどうしたらよいか、あらかじめ主治医と話し合っておくとよいでしょう。