インフルエンザワクチン

インフルエンザについて

インフルエンザ(流行性感冒)は「インフルエンザウイルス」というウイルスが原因の感染症です。普通の風邪よりも症状が重く、38℃以上の高熱、のどの痛み、せきや鼻水、体のだるさや筋肉痛などが現れます。場合によっては肺炎や脳炎などの合併症を引き起こし、入院が必要になったり、命に関わることもあります。毎年きまって流行するものは「季節性インフルエンザ」と呼ばれ、A型ウイルスあるいはB型ウイルスによって引き起こされます。A型ウイルスの中にもB型ウイルスの中にもそれぞれさらに細かいタイプがあり、どのタイプが流行するかは毎年異なります。例年、11月下旬ごろから患者さんが増えはじめ、翌年の2-3月頃に流行のピークを迎えて4月下旬ごろに収まります。

インフルエンザワクチンについて

季節性インフルエンザ予防の基本はワクチンの接種です。国内のインフルエンザワクチンはA型とB型の両方に効果のあるワクチンで、流行前の初夏ごろにつぎの冬に流行しそうなウイルスのタイプを予測して作られます。全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんは病気そのものの影響、あるいは治療薬の影響によって、健康な人よりもインフルエンザにかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。そのため、感染リスクを下げる、重症化を防ぐ、合併症を予防する、といった点から、ワクチン接種が推奨されます。日本で使用されている現行のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、ステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤を使用中の患者さんでも接種することができます。ただし、免疫を抑える治療がワクチンの効果を弱めてしまう可能性があるため,病気の活動性が落ち着いているようであれば、免疫を抑える治療薬を使用するタイミングをワクチン接種にあわせてずらすことがあります。その場合、メトトレキサートについてはワクチン接種後2週間休薬し、リツキシマブについても接種後2週間は点滴を遅らせます。そのほかの免疫抑制薬では休薬の必要はありません。ワクチン接種とSLE治療薬を使用するタイミングについてはその時の病状に応じて検討する必要がありますので、主治医の先生と相談して下さい(1)。ワクチンは効果が現れるまで2週間程度かかり、その後3〜5ヶ月効果が続くため、11月~12月前半の間に接種します。またウイルスは毎年少しずつ変化するため、それに対応したワクチンを毎年接種することが必要になります。副反応としては注射部位の腫れや痛み、倦怠感、発熱などが出ることがありますが、軽いものがほとんどです。

インフルエンザワクチンの発症予防効果は30-70%程度とされており、手洗い・うがい・マスク・人混みを避けるなど基本的な感染対策も重要です(2)。インフルエンザは毎年大きな流行が発生し十分な対策が必要な感染症ですので、同居する方も含め、感染や重症化を防ぐために毎年のワクチン接種を心がけましょう。

(参考)

  1. 2022 American College of Rheumatology Guideline for Vaccinations in Patients With Rheumatic and Musculoskeletal Diseases. Arthritis Care Res (Hoboken). 2023; 75(3): 449-464.
  2. 日本内科学会雑誌113巻1号: 2064-2069.

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