ステロイド
ステロイドとは
私たちの体内には様々なホルモンが存在しますが、その一つに副腎という臓器で作られるステロイドホルモンがあります。ステロイドホルモンにはグルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、性ホルモンがありますが、治療に使われるステロイドは主にグルココルチコイドの働きとミネラルコルチコイドの働きを持つように作られています。
ステロイドの種類
①内服薬および注射薬
プレドニゾロン(プレドニン®) 、メチルプレドニゾロン(メドロール®) 、ヒドロコルチゾン(コートリル®) 、ベタメタゾン(リンデロン®) 、デキサメタゾン(デカドロン®)などがあります。薬によって効果が持続する時間や作用(グルココルチコイドの働きやミネラルコルチコイドの働きの強さなど)が異なるため、病状によって使い分けがされます。
②外用薬
多くのステロイド外用薬がありますが、作用の強さの順にストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム(マイルド)、ウィークの5段階にわかれます。皮疹の状態や出ている場所によって使い分けがされます。
ステロイドはどのように効くのでしょうか
SLEに対しては,ステロイドのグルココルチコイドとしての働き(炎症をおさえる作用、免疫を抑える作用など)を期待して使用されます。SLEは、自分自身の細胞を攻撃してしまう異常な免疫系によっておこる病気です。ステロイドにはその異常な免疫系や炎症を抑える効果があり、細胞や臓器へのダメージを防ぐことができます。一方で、ステロイドは糖、蛋白、脂質の代謝など体のバランスを保つための様々な作用をあわせ持っているため、使用によって様々な副作用がでる可能性があり、注意が必要です。
どのように服用すればよいのでしょうか
それぞれの患者さんで使用するステロイドの種類や服用方法は異なるため一概にはいえません。ただ、一般的にはステロイドは一定期間、十分な初期投与量を使って、病状を確認しながら少しずつ減量していくことが多いです。
病気の勢いが強い場合は入院をし、はじめは用量の多い点滴を行った後に内服治療へ移行する場合もあります。
副作用にはどのようなものがありますか
ステロイドの内服量、内服期間などにより様々で、すべての患者さんにみられるわけではありませんが代表的なものを説明します。
・易感染性:免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります。手洗い、うがい、マスク着用、人混みを避ける、十分な睡眠をとるなど感染症対策をして下さい。ステロイドの使用量が多い間は感染予防の薬を内服することもあります。
・体形、皮膚の変化:長期間、高用量のステロイドを使用していると、満月様顔貌(ムーンフェイス)、野牛肩(バッファローハンプ)、中心性肥満がでてきます。体系の変化はステロイド量の減量に伴って基本的には改善傾向となります。他にニキビ、多毛、皮膚の菲薄化がみられることがあります
・糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧:食べ過ぎずバランスの良い食事にして、適正体重を保つことが大切です。また、塩分の取り過ぎにも注意が必要です。状況に応じて、糖尿病・高脂血症治療薬や降圧薬を使用することがあります。
・骨粗鬆症:長期間ステロイドを使用する場合は骨がもろくなるのを防ぐためにビスホスホネート薬や活性型ビタミンD3製剤などを内服します。状況に応じて副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド®)などを使用することもあります。
・精神症状:過食、不眠、気分の落ち込みがみられることがあります。睡眠導入剤や降うつ薬の使用をすることもあります。
・無菌性骨壊死:ステロイドの服用により大腿骨や上腕骨などの壊死が生じることがあります。股関節や膝、肩などに痛みがある場合などは主治医の先生に相談して下さい。
・その他:白内障、緑内障、筋症状、生理不順などがあります。
その他、何か注意が必要なことはありますか
・ステロイドを長期的に内服した場合、副腎が萎縮してしまうことにより体内でつくられるステロイドホルモンの量は少なくなります。そのため、急にステロイドを中止したり減量したりすると、体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがあります。これをステロイド離脱症候群といい、危険な状態になる可能性があります。絶対に自己判断でステロイドを調整したり中止したりしないようにして下さい。
・ワクチンには大きく分けて何種類かあり、ステロイドやそのほかの免疫抑制薬の内服中は生ワクチンという種類のワクチンは基本的に接種できません。ただし、全てのワクチンが接種できないわけではなく、むしろ感染症の予防のために接種が望ましいワクチンもありますので、ワクチンを希望される際には、打ってよいもの(生ワクチンではないワクチン)かそうでないかを必ず主治医の先生に確認してください。